植物天使の小話/壱私は、花。贈答用に、鑑賞用に、人工的に養殖された花。売買を目的とし、そのためだけに生まれた花。 私の世界は狭い狭い鉢植えだけ。私にはそれが世界の全てで、それが自分 の全て。このままその世界だけしか知らないから。 例え摘まれて、世界を知っても。私には、摘まれた瞬間に終わってしま う。すべての感覚が閉ざされ、ただ意識と生命が続くだけにすぎないから。 送られて、水に生けられて、飾られて。でも、私にはその世界を感じるので はなく見るだけとなる。 私は、人のためだけに生まれたもだから。 でも、その世界を知れない。感じることが出来ない。それは、それで幸せ なのかも知れない。私の世界は、この鉢植えだけ。それなら、知らないまま 憧れることも羨むこともないのだから。 知らない、それは私にとっては幸せなことなのかも知れない…。 ジャンル別一覧
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