027716 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

最果ての世界

最果ての世界

植物天使の小話/壱

 私は、花。贈答用に、鑑賞用に、人工的に養殖された花。売買を目的と
し、そのためだけに生まれた花。
 私の世界は狭い狭い鉢植えだけ。私にはそれが世界の全てで、それが自分
の全て。このままその世界だけしか知らないから。
 例え摘まれて、世界を知っても。私には、摘まれた瞬間に終わってしま
う。すべての感覚が閉ざされ、ただ意識と生命が続くだけにすぎないから。
送られて、水に生けられて、飾られて。でも、私にはその世界を感じるので
はなく見るだけとなる。
 私は、人のためだけに生まれたもだから。

 でも、その世界を知れない。感じることが出来ない。それは、それで幸せ
なのかも知れない。私の世界は、この鉢植えだけ。それなら、知らないまま
憧れることも羨むこともないのだから。
 知らない、それは私にとっては幸せなことなのかも知れない…。


© Rakuten Group, Inc.
X